客が席につくと一人のボーイが箸と紙とを持って、一通り客の注文を聞く。

都の人は贅沢だから、様々な注文をする。(熱いのや冷たいのや、温かいのやてごろなのや、とびきり冷たいなど各々注文が違う。)

ボーイは聞きおわると、中の番頭に注文を知らせる。これを「鐺頭」といい、また「着案」ともいう。それが済むと、間もなくボーイが左手に椀を三つ挟み、右腕には手の先から肩まで二十ばかりの椀をずらりと乗せて来て、テーブルに並べる。

どれもみな各人の注文にあっていて、間違いがあってはいけない。

一つでも間違っていたら、客からの知らせで主人が必ず怒鳴りつけ、あるいは給料を減らしたり、ひどい時は首にする。